◆今月のメッセージ 2019.04:
今は、桜が満開の時期でございますが、皆さま、お変わりございませんか。
今日、4月30日からの新元号が、「令和」と決まりました。
平成は自然災害も多く、平穏ではなかったと思いますが、個人的には、「平成」という名前は、字に安定感があって好きでした。
「令和」の「令」とは、幅広い意味を持っていると思います。
まずは、いいつける。命じる。いいつけ。を思い浮かべますが、「訓令」「法令」のように、決まりや掟と言う意味や「令名」のように、立派なという使い方もします。
「令嬢」のような使い方もしますが、とにかく、素晴らしい時代であって欲しいと思います。
4月は、年度の始まりですから、入園式、入学式のご準備でお忙しい時期だと思います。
いよいよ、4月から、レ・クロッシュのリサイタルが開始となります。
東京文化会館の公演は、5月27日(月)でございますが、その前に、4月にも帰国早々5公演ございます。
どうぞ、皆さま、生の演奏は、同じ演奏はございませんし、聴けば聴くほど、耳が慣れてとても聴きやすくなりますので、是非何度も足を運んで下さいませ。
レ・クロッシュは、今春、「グリーグ チェロとピアノのためのソナタ Op.36」を演奏致しますが、とても迫力のある北欧の空気を感じることが出来る、民族色豊かな曲です。
グリーグは、北欧のノルウェーの作曲家です。
娘は、サンクトペテルブルクの建都300年記念公演の折、そして、その後日本でも「グリーグのピアノ協奏曲 Op.16 イ短調」を演奏させて頂きましたが、私も大好きな曲です。
作曲家も演奏家も、その時代にどのような方と関りを持ったか、という事で、音楽人生が変わってくるものです。
エドワード・グリーグの場合は、22歳の時に、54歳のフランツ・リストに大変評価してもらい、特に、リスト自身がハンガリー人で民族色豊かな音楽を好んでいましたので、「これこそ本物の北欧の音楽だ!」と作品16のピアノ協奏曲イ短調を実際にリストが弾いて感激してくれたそうです。
それから、グリーグは自信を持って作曲をするようになり、作品36番目には、今春演奏致します、チェロとピアノのためのソナタを作曲されました。
何でも出会いというものは大切な事ですが、リストは、とても若き演奏家の発掘に力を入れた方です。
音楽家に取りましては、運命的な出会いはとても重要になります。
ここでリストの話になると長くなってしまいますが、指揮者でもあったリストは、ワーグナーの歌劇「タンホイザー」を上演し、1850年には、「ローエングリン」を世界で初めて演奏上演しました。またシューマンを高く評価し、ベルリオーズが新しすぎる音楽だ、と嫌われがちだったのを改めさせたと言われています。
そればかりではなく、ショパンの作品を広めて、メンデルスゾーンの後押しをしたそうです。
リストの存在は大きく、もしリストがこの世に存在しなかったなら、現在弾かれる曲は、もっと少なかったでしょう。
何と、ショパンにフランスの女流作家のジョルジュ・サンドを紹介したのもリストなのですから、これは凄い話です。
リストの存在がなければ、ショパンの作曲した楽曲も変わっていたのですから…
もし、ジョルジュ・サンドとの出会いがなかったなら…考えただけで、何だか不思議な気持ちになります。
という事で、リストにグリーグは会っていなかったなら、今、コンチェルトもチェロソナタもどこかに埋もれてしまっていて、弾かれていなかった可能性もあったのでは…、と考えますと、リストに心から感謝です!
ロマン派の、メンデルスゾーンは1809年生まれ、ショパンとシューマンは1810年、そしてリストは、1811年生まれなのですが、リストが作品を広めてくれなかったなら、ロマン派の曲が少なかったのは確かです。
それにしても、何故この3年間に、素晴らしい天才作曲家が集まったのか、とても謎です。
リストに感心させられることは、ショパンとリストは、弾き方も性格も全く違いますのに、良いものは良い、と認めているところがすごい人物です。
自分が上に立ちたいから、上手なアーティストや作曲家をライバルだと感じて、無視してしまう音楽家の方が多いと思うのですが、リストの力なくしては、ロマン派を語れないと思います。
最後に、リストは晩年に、たくさんの弟子の指導に当たっていたそうですが、それを良いことに、プログラムのプロフィールに「リストの弟子」と記載したピアニストが演奏をしたそうです。
ところが、リストは一度も会った事もないピアニストだったことで、彼女は、すぐリストに謝ったのですが、リストは「弾いて聴かせて下さい」と言い、演奏の感想を述べて、「さあ、あなたは、これからリストの弟子だと胸を張って言っていいですよ。」と言われたそうです。
本当にすごい寛大な人だったのですね。
こういう広い人間になりたいです。
では、リストからお褒めのあった、グリーグの演奏をお楽しみに!
いよいよ4月4日に帰国致しまして、また日本での生活がしばらく続きますので、どうぞよろしくお願い致します。
どうぞ、素敵な4月をお過ごし下さいませ。